AicE サンプル - コミティア部活動|ヒロイン☆ふぇすた

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HEROINS 参加ヒロイン&対象作品紹介

(創庫Kaleidoscope「AicE」より)

ジェミニィ・フェイル
ジェミニィ・フェイル
ジェミニィ・フェイル

お試し読み

AicE-FLAT ~ Aqua Inteligence Co,ltd. team Excel. 2 ~ (シリーズ2巻)より

≪プロローグ≫
 並行世界。時間を縦軸に、可能性を横軸にした事象の平面。
 その面の表面を形作るのは、種々の枝と根。発生点を同一とするこの枝と根の総称を世界によっては『世界樹』と称する。
 大きさは有限にして無限。常に時と可能性のあるだけ、無造作に平面を這う様に成長し続ける、永遠の樹。
 時にそれらの中から、枝から枝へ飛び移る術を持つ者が生まれ、飛び出す。
 枝は世界。数多くある世界。
 数ある世界の中には力を求めるが故に自らを滅びに導く者もいる。
 その力が他の世界へと流出し、更なる滅びを招くこともある。
 こうした現実を知る者たちは各々、自らの世界で対処法を磨き続けていた。
 しかし―――それをあざ笑うかのように人々の力への欲望に限りは無く、またそれと同じだけ、人々の平穏への願いは尽きず。
 そして、今日もまた力を巡る争いは続く。

 大きな爆発音。伴う衝撃。ブリッジにレッドランプが灯り、サイレンが鳴り響き、非常事態を告げる。
「どうした!」
 白いローブに身を包んだ男―――この艦の艦長―――の声が響く。
 オペレーターの女性は必死に身を起こし、端末を叩きながら叫んだ。
「しゅ、襲撃です! いきなり横から激突を―――!」
 叫ぶ女性に艦長は呆然と呟く。
「バカな……我が艦がオーヴァリア次元騎士団の軽輸送艦と知っての襲撃か……?」
 数ある並行世界の中でも周囲世界に対し絶大なる影響力を持つとされる魔法世界、オーヴァリア。
 その中でも次元空間の守護を任とした警務機関が次元騎士団。
 これを敵に回すことは、その近隣におけるあらゆる世界を敵に回すことに等しい。
 有限でありながら無限と言われる並行世界空間。近隣世界とはいえ、オーヴァリアの影響下にある世界と言うのは桁が違う。
 どれだけの長命種であろうとも、通常の手段ではオーヴァリア影響下の世界にいる以上、ソコから脱出する事はできないであろう。
 なればこそ艦長にはこの事実が信じられなかった。
 しかし、呆然としてもいられない。艦長は大急ぎで指示を飛ばす。
「被害は?」
「第三ブロック、第四ブロックに破損。敵艦の人員が乗り込んでいることを確認!」
 報告に艦長は顔を歪めながら呟く。
「絵に描いたような海賊戦法か……」
「今、警護団の人員が掃討に向かっています!」
 警護団。オーヴァリアにおける騎士団の下位警護組織。
 下位とはいえ、決してその能力は低くない。いや、むしろ様々な事象に対応できる汎用性を持つ人員で構成されていると言ってもいい。
 だが―――。
「だ、ダメです! 押されています!」
 各所の中空モニターウィンドゥから、劣勢の報告がライブ映像で入ってくる。
「くっ……!」
 艦長は思わず手を握り締めた。しばらくモニターを睨み。
「やむをえまい……私が行こう」
 言うとそのまま踵を返し、ブリッジを後にした。

 輸送艦、最深奥。
 そこに今回の輸送物がある。
 他世界遺失技術使用創造物品―――通称・ミッシング。
 それは時に、一つの世界をも破壊しかねないほどの威力を誇る、危険な遺物。
 ある物は高エネルギーを誇る結晶体であり、またある物は高機能を誇る武器であったり、また、そうではなくとも、そういったモノへと転用できるシロモノであったり―――。
 どちらにしても、よほど『正しい人間』でない限りは確実に使い方を誤り、自らの住む世界はおろか、他の世界をも巻き添えにして破滅へと導きかねない、危険な品。
 その回収と保全もまた、オーヴァリア次元騎士団が「並行世界の管理者」と自らを任じ、使命と考えて行う重要な職務の一つである。
 今回襲われた軽輸送艦も、その中で回収されたミッシングを積んでいた。
 その名は『魔砲』。オーヴァリアが並行世界郡の立ち並ぶ上位次元空間へと進出する以前に隆盛を極め、いずこかへと消えていったとされる、伝説とまで呼ばれた魔法文明『ファイドラント』の遺産。
 約一メートルの円筒形。横に突き出たスコープにいくつかの取っ手。ロケットランチャーの如きシルエットを持つソレは、やはり使い方によってはたった一人で世界を一つ潰す事も簡単にできうると言う。
 そんな危険なモノが鎮座された、軽輸送艦最奥格納庫の前に、二人の女性が立っていた。
 一人は青いマントにナポレオン帽をかぶった長身の女性。顔には仮面舞踏会にでも出ているかのような、青いドミノマスクがかかっている。
 一人は黒い三角帽子に黒いローブを羽織った少女。帽子を目深に被っているため、顔そのものの様子は窺えない。しかし、その様はまるでおとぎ話にでも出てくるかのような黒い魔女。
 二人は格納庫の前に立って言う。
「……本当に大丈夫かしら。これで、あたしの目的が……」
 青い女性の呟き。その言葉には、少しならずとも『迷い』が見え隠れしている。
 その背中を押すように、黒い少女は優しく声をかける。
「大丈夫ですよ。あたしの占いにも出ていますとも。これが―――あなたの目的の第一歩となるのです」
 黒い少女の言葉に、青い女性は意を決するように扉に手をやる。
 瞬間―――扉に白色の魔法陣が輝きと共に浮かび上がり、彼女の手を焼こうと火花を散らす。
 慌てて手を引っ込める青い少女。そして小さく呟く。
「やっぱり。封印を兼ねた防護結界だわ」
「では、私が」
 黒い少女が前に出る。その時。
「させん!」
 二人の後ろから叫び声が響いた。
 青い女性と黒い少女が声の方を振り向く。そこには、この船の艦長の姿。
 艦長は手に持つ杖を掲げて叫ぶ。
「それは、並の者が手を触れてはならぬ、禁忌の技術の結晶! お前たちのような無頼の徒に渡すわけにはいかない!」
 必死に叫ぶ艦長。同時に青い女性の下に、通信が届く。
 青い女性の着る青い帽子。そこから彼女自身の魔力を震わす形で。
『す、すいません……姐さん。こっちの防御を抜かれちまいました』
 青い女性はふ、と微笑を浮かべて。
「構わないわ。こっちで処理させてもらう」
 言うと、小さく腕を振る。幅広の袖から、装飾の無いシンプルな棒が出現する。

【来たれ、光よ。その微たる熱を集め、力を無し、轟々たる貫きを持ち、敵を穿て―――】

 青い女性の小さな呟きが、空間を支配し、大きなエコーを伴って響き渡る。
「くっ!」
 艦長は自らの杖を構えると、やはり呪文を紡ぎ叫ぶ。

【来たれ轟炎。悪しき闇をなぎ払い、正義を示す力となれ―――】

『レイズ・ペネット!』
『ヤスト・フレイン!』

 前者が青い女性。後者が艦長。両方が「力ある言葉」を同時に放つ。
 艦長の呪文と同時に凄まじい両の火炎が出現。青い女性と黒い少女を包まんと襲い掛かる。
 轟音。
 艦長は、自らの呪文が命中した事を確信し、ぐっと拳を握った。
 が。
 どきゅ! という音と共に、光の筋が一条、炎の奥から立ち現れ、艦長の肩をぶち抜く。
「がぁ……っ!」
 勢いに押され、遠く後方へと飛ばされる艦長。
 炎の勢いが収まった時、そこに変わらず立ち続ける、二人の女の姿。
 黒い少女は我関せずと言った様に。
 青い女性はすまなそうな瞳を艦長に向けて。
 そして、会話を続ける。
「これで邪魔は無くなったわ。始めましょう」
 何かを振り切るように言う青い女性。黒い少女はソレに応じて、頷きながら扉に手をかざし、小さく呟く。

『拒みの白き番人よ。我らに許しを与え、その役割を終えよ―――壊錠』

 少女の呟きと共に浮かび上がる白い魔法陣。
 それはもはや二人の女性の何物をも焼く事は無い。
 陣は小さな火花と煙を放ちながら、光の粒子へと還っていく。
 その様子を見ていた艦長。
「バ、バカな……っ! 封印結界は所定の儀式と魔力をもってしか解除されないハズ……! 単なる呪文などで……!」
 驚愕を伴う呟き。しかし誰もそれに答えることは無いまま、二人の女性の前にある扉は開き、本来ならば招かざるべき侵入者を招きいれてしまう。
「ぐ……!」
 なおも体を引きずり、二人を止めようとする艦長。
 しかし、ここまでだった。
 彼の意識は遠くなっていく。遥かなる闇の底へと。
 堕ちていく意識の中で、二人の女性の足音だけが遠く遠く響いていた。

≪1.情報は手招く≫
 立ち並ぶコンクリートの建造物で構成される都市部。
 その間を縫うように点在する木造の建造物。
 魔法ではなく科学によって発展してきたこの世界は、オーヴァリアからは「238外境世界」などと呼ばれている。
 オーヴァリアにとって、確認はされているものの、その法の庇護下には無いとされる世界である。
 一方で、オーヴァリアからしてみれば、自らが存在を確認していると言う自負から、何とかしてその庇護下に置けないものかと画策されている世界でもあったりする。
 もっとも、この世界に生きている殆どの人間はそんな事は知らない。
 ここは、そんな世界の中でも『地球』と呼ばれる星の『日本』と呼ばれる国にある『浜戸市』という地方都市。
 昔から港町として栄え、洋風と和風とが微妙なバランスで混在されている街。それでも中央部にはソレなりの現代的な町並みが乱立している。そこから少し離れた古書店街に、この喫茶店はある。
 見た目は古書店街の雑居ビル。一階は木彫高い、喫茶マニアが喜びそうな古書店街のカフェ。
 表の看板には『Moon Reaves(ムーン・リーブス)』と、喫茶店の名前が記してある。
 その店先で年の頃十七程度の少年が一人、青いエプロン姿で竹箒を使って店前の道端の清掃に勤しんでいた。
 秋も深まり冬も目前。少年は必死に、されど表情は穏やかに、昼前の路地を掃き続ける。
 気がつけば昼時に向かって客も増えてきた。
「そろそろ、か……」
 少年は呟くと、箒を持って店の中へと引っ込む。案の定、店の中は適度な人の入りだった。
 フロアの中央では、赤いエプロンを着た女性が注文を捌くのに右往左往している。
 赤エプロンの女性は少年に気付くと、思わず叫んでいた。
「ちょっと、縁也! 掃除終わった? なら、早くフロアに入って!」
 縁也。天原縁也。それが少年の名だ。
 縁也は急ぎながら。
「解ってるよ、雫姉!」
 赤いエプロンの女性こと縁也の義姉―――実際には従姉だが―――である天原雫に返事をしてカウンター奥、厨房を抜けた先にある裏の廊下へと急ぐ。
 そこにあるのは上階への階段とロッカールーム。
 縁也はロッカールームの中へ入り、掃除用具を専用ロッカーに片付けると、ルームに付随している流しで手を洗う。
 ロッカールームから出ると、次はキッチンの手前に備え付けてある消毒液入り台つき洗面器で手指を消毒。
 そのままフロアに向かってお盆を持ち、客席へ行き、注文を受け付ける。
 この一連の手馴れた動作を流れるように行い、そして。
「いらっしゃいま―――せ……」
 思わず縁也の動きが固まる。
 目の前にいるのは、銀嶺の如きアッシュブロンドをショートカットにしている少女。
 頭には赤い宝玉を抱いたカチューシャ。着ている服はテニスウェアにも似た軽装のシャツとスコート―――とはいえ、秋口ゆえかその上にはさらにもう一枚、薄緑色のベストがかかっているが。
 この少女、名をジェミニィ・フェイルという。喫茶店ムーンリーブスのお得意様だ。
 そのジェミニィ。ぶっす~~と、難しい顔で、書類を広げながら、この世界の人間には全くもって理解できない異国の文字をがしがしと書き殴っていた。
(うぁ……)
 縁也はその様子に、思わず眉をひそめる。
 誰が見ても解らない書類の内容。だが、縁也だけはソレが何か、如実に読み取れた。

【始末書】

 前の仕事で何らかの失態をしたらしい。と、いうか―――。
(次元騎士団の始末書、か。俺たちのせい、だよなぁ……)
 思わず縁也は思い起こす。
 ジェミニィは知らない事だが、この『ムーンリーブス』は本来の喫茶店としての顔とは別に、もう一つの業務を行っている。
 その業務が―――オーヴァリア次元騎士団に所属するジェミニィの仕事とガッチリ、バッティングする。
 いわばジェミニィたちにとって縁也たちは商売敵とも言える存在なのだ。
 ジェミニィが縁也たちに気づいていないのは、彼らの装備が顔や体格を隠し、作戦行動中にコードネームで呼び合うことを常としているため。
 声でバレそうなものだとも思わないでも無いのだが、どうもジェミニィも縁也も作戦行動中は緊張があるためか、声の質が変わるようで。
 とにもかくにも、縁也はジェミニィが次元騎士団の人員である事を知っているが、ジェミニィは縁也たちが商売敵である事を気付いていないという、奇妙な関係が続いている。
 思わず神妙になりながら、じっとジェミニィを見つめる縁也。
 その視線に気付いたか。ジェミニィの深き湖の如き青い瞳が縁也を捉える。
「あ……あっ!」
 ジェミニィは大慌てで赤くなり青くなりしながら机の上の書類を雑にまとめて、持ってきていた鞄にぶち込んだ。
 そして縁也に顔を向けて。
「えっと、あのー、そのー、コレはっ!」
 縁也はにっこりと笑いながら言う。
「ご注文は?」
「え……?」
 きょとんとするジェミニィ。縁也はダメ押しとばかりに。
「デザインか何かの勉強ですか? さっきの紙、見たこともない模様ですけど」
 思いっきりスッとぼけてみる。この事で―――ジェミニィも気付いたようだ。
 自分が本来住んでいる場所とは全く違う、いわば「異世界」に来ている事に。
 そして、この世界でそんなコトを真っ正直に述べれば、正気を疑われかねないという事も。
 この世界では、まだ次元間移動技術は一般的なものではない。
 それどころか開発すらマトモに進んでいないとされている。
 ジェミニィはそれらを思い起こして慌てて笑いながら。
「あ、ええ! そうなんです。なかなか問題だらけでして……ままならないんですよ」
 はぁ、と溜息をつくジェミニィ。
 一方で縁也は少しだけ痛む気持ちを抑えながら。
「ま、ま、ま。そんな時は甘いものとかいかがです? ケーキの新作、出てますよ。マロンと金時芋のモンブランとか、ゆずのシフォンとか」
 この言葉に。ジェミニィの顔がぱぁ……っと、明るくなる。
「うわ。聞いてるだけで美味しそう! いや、メニューメニュー! ん、もう、ソレを早く言って下さい!」
 ムーンリーブスのケーキのファンとしては見逃せない話題。
 ジェミニィは先ほどまでの憂鬱など、どこかへ吹き飛ばしたかのように極上の笑みを浮かべながらメニューを見つめる。
「う~。迷う。迷いますよぅ……」
 アレも食べたい。コレも食べたい。体中が訴えている。
 ジェミニィは縁也にきらきらきら!と輝く瞳を向ける。
 縁也は笑いながら。
「解りました。新作、一通り全部ですね……大丈夫ですか?」
 一応、気遣うがジェミニィは、にこやかに勢い良く。
「はい、はい! 大丈夫、大丈夫ですよぉ! ついでにミルクティーもお願いします! 早く、早くぅ!」
 機嫌バツグンうっきうきで叫ぶ。
 ここまで来ると縁也も断る理由をもたない。
「はい、かしこまりました。ミルクティーに新作ケーキ一通り……少々お待ちくださいませ」
 この返事に。
「わーい!」
 諸手を挙げて喜ぶジェミニィ。
 縁也は注文に応えるため、カウンターへと向かう。
 その時。ジェミニィの携帯電話が鳴った。
「はい、もしもし!」
 勢い良く出るジェミニィ。が、途端に表情が厳しいものへと変わる。
 次元騎士団のエースチーム、ユニット・スカーレットに所属する魔法使いのソレへと。
「はい。はい……え? 軽輸送艦の襲撃? ウェイズ? まさか……ウェイズファミリーですかっ?」
 ジェミニィが叫んだ瞬間―――パリィン! と。カウンターの中から音が響いた。
 その場にいる全員が音の方を向く。
 カウンターの中では、縁也が青い顔で呆然としていた。その足元には、割れたティーカップ。
「何をやってるの、縁也!」
 姉の叫び。縁也は思わず我に返り。
「す、すいません。手が滑ってしまいました」
 客に詫びた後に、慌てて奥に引っ込み、掃除道具を手に戻ってくる。
 一方でジェミニィは中断した会話を続ける。
「す、すいません。でも、ウェイズファミリーは、あたしの生まれるさらに前に『天空のハヅキ』様の手によって壊滅させられた次元海賊では……え? 手口が同じで。はい。確かにウェイズの血筋にあるミル様は、ラン様を騎士団に残して、ハヅキ様やエンちゃん失踪と同時に行方が……と、言う事は『ウェイズ』の復活ですかっ?」
 カウンターの中では、縁也が一心不乱にティーカップの後始末をしていた。が、箒や塵取を握る手に、異様な力がこもっている。
 ジェミニィの会話を端で聞きながら、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる縁也。
「わ、解りました。すぐに戻ります……」
 意気消沈、残念な事この上ない。そんなカンジに電話を切るジェミニィ。
「うぅぅ……ケーキぃ……」
 たばー、と滝の涙を流すジェミニィ。
 縁也は見かねて掃除の終わったカウンターから声をかける。
「包みましょうか?」
 ジェミニィは―――涙を拭かず、こくこくこく、と何度も力なく頷いていた。 

≪以降は実際の本でお楽しみください≫

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