恋に嘘して サンプル - コミティア部活動|ヒロイン☆ふぇすた

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(ゆにわ荘102号室「恋に嘘して」より)

ルナリア・カガミ
ルナリア・カガミ
ルナリア・カガミ

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恋に嘘して~プロローグから一章序盤~

プロローグ~旅の終わりに

旅の終わりとは、案外呆気無いもののようだ。
見つからないと思っていたモノは、案外あっさりと見つかって今私の目の前にあった。
想像していたモノとは少し形が違う。
だが、ご丁寧にそれは私たちが目的としていたモノがどういうものか、完全に解説をしてくれると言うほどのものだった。
「全てを……説明したのう」
ああ、私も彼も、全部を聞いた。
そして、それをすべて理解した。
「私の力なら、全てを元に戻すことができる」
それを、ずっと求めてここまで来た。
「この男の受けた呪いとも取れる力、それを打ち消すことができるのは私の力のみだ」
そうだろう。あっけなかったとはいえ、私たちはここまでいくつもの地でそれを探して、見つからなかったのだ。他の方法などおそらく無いのも理解している。
「だが、それは『デリート』ではない『リセット』でのう。その力を打ち消すということは、その時まで遡って『その力を受けなかった』という歴史を、この男に上書きするしかないのだ」
その意味は……さっきの説明でおおむね理解していた。
「その男が、力を浴びたときからの、『絶望』も『苦しみ』も『苦悩』も、『希望』も『喜び』も『安らぎ』も、『記憶』も『経験』も『思い出』も、全てを失わなくてはならないのだ」
それはつまり……簡単に一言でまとめると。
「旅の記憶が……無くなる」
それは、ある意味彼と私のすべてだ。
それまで確かに顔見知りでもあったし、同じ場所で暮らしていたから何かと思い出はある。だが、ここまで深く時間を共有したことは無かった。彼と私の大半は、この旅の記憶と経験なのだ。
しかし………。
その旅の目的が、その旅をすべて消してしまうのだ。
ああ、そうだ。ずっと求めていたことだ。
全部元通りにしようと、ずっと私は求めてたのだ。
私は、ふと彼の顔を見た。
彼は……笑っていた。
それは、私にすべてを委ねるという意思表示か。
思えば彼が私に指図することなど、この旅では数えることでしかなかったし、大半は私が間違った選択をしたり、わがままを言ったりしたときだけだった。
それはきっとこの旅をちゃんとするための、彼の覚悟だったのかもしれない。
このゴールにたどり着くために、彼が自分を律した覚悟だったのかもしれない。
その彼が、私にすべてを委ねている。
おそらく、彼にかかった力を考えれば、一番苦悩しこの場から逃げたいのだ彼の筈だ。そう言う力が彼を呪っているのだ。
なのに彼は耐えている。彼はこの場から逃げようとしない。
なんて、強い人なのだろうか。
それに比べて私は…………。
………………。
そう、答えを出さないといけない。
私が決めないといけない。
彼をこの呪縛から解き放たなければならない。
だから………、私はもう決まっている答えを口にするのだ。
さあ。
………さあ。
……………さあっ!

世の中には不思議な話があるものだ。普通に暮らしていたら、なかなか巡り合うことも無いのだろうけど。
私の一日と言えば、朝から一般以上の教養を学び、日中は家の客人の応対をして、夜は音楽やら美術やらの芸術的な文化を習い、そして一日を終えていた。
ただそれだけの毎日が続いていく。変化なんてそうそう起きることは無い。
いや、もちろん生まれた瞬間からそんな生活を強いられていたわけじゃない。まだもう少し幼いころはもっと一般的な勉強や遊びの記憶がある。
数年前のはずだ。まだ私も16歳になったばかり。いかに優秀であり、人よりも進んだことを学んでいたとはいえ、周囲にはまだ子供の姿があった。……ほんの数年前の話のはずなのに、今や随分遠い話のように思えるのも不思議な話だ。
今となっては、今の日常がずっと昔から続いているような錯覚にも落ちる。……それほどまでに私の日常は、これからもずっと代わり映えがしないはずだった。
しかし、世の中には不思議な話があるものだ。
そもそもこの世界は、一度高度な文明が衰退したという経緯がある。
おおよそ500年前と言われる過去の文明は、今その痕跡のほとんどが目に触れることは無い。
それがどんな技術だったのか、今となっては誰も解からない。
ただ例えば、この地上が球体だとか。月は地球の周りをまわっているとか。あの輝く星空は宇宙というものだとか。そんな現代人では到底想像できない知識が今も伝わっているため、その存在自体は確かなものだったと認めざるを得ないのも事実だった。
そして、滅多にあることではないが、その旧文明の痕跡が表に現れることもある。
以上進化してしまった生物とか。扱いがわからないまま暴発してしまった古代の兵器とか。今では考えられないほどの高度な建造物とか。ほとんどが天災ともいえる現象を引き起こしながら、表に現れるのだ。
ただ、人間の傲というものは深い。例えばそれらが保管できるようなものであれば、何かと理由を付けて手元に置いておきたいと思ってしまうものなのだ。それがまた次の大事故につながると近いしているはずなのに……。
話を戻そう。
世の中には不思議な話があるものだ。
それは時として人の人生を大きく狂わせる要因となる。
私の場合はそれが……。

異性に惚れ薬をぶっかけるという事であったのだ。

草原が続く。それはもう、ずっと遥か彼方まで続く。
ただ果てが無いわけではなく、その向こうには山々が見えており、このまま何もなければその山のふもとにたどり着くのであろう。
しかし、草原というのは随分と歩きやすい場所だ。
ここまで旅を続けてきたが、沼地に森林に山岳地帯と、いろいろな環境を進んできた。その中では、街道に次ぐ歩きやすさではないだろうか。
また、今の時期この国は気候が良い。吹き抜ける風もどこかすがすがしい。
私は小高い丘を駆け上がると、大きく深呼吸をした。
風が私の長い髪をさらう。グレーの髪が太陽の光を浴びてキラキラ光る。
防寒に適した動きやすい私の服は、少しだけボタンをはずして通気性を良くしている。短パンと紺のベストの隙間を風がわずかながら抜けていくのも心地よかった。
とても気持ちが良い。街で休んでいる以外で、ここまで心地がいいのも久々だ。
それなりに長い旅ではある。だからこそ、こういう気分のいい日はとてもかけがえのないものに感じる。
「いいところだね、ギンセン」
振り返りながら、私は後ろについてくる男性に声をかける。
「そうですね、お嬢様。天気にも恵まれています」
そんな風に、相も変わらず丁寧な口調で返してくる。
私と彼の関係は『主従』である。ゆえにこの言葉遣いは全く間違っていなくて、むしろ適切ともいえるだろう。
だが旅に出てしまえば、私は屋敷のお嬢様ではなく、彼も屋敷の使用人ではなかった。
そのことについて話すと、彼は「口調は素なんですよ」などと答えてきた。
はじめはこちらを気遣わせないためのいいわけかとも思ったが、いろいろな街にたどり着き人と出会うたびにそれが嘘でないことを理解した。
確かに、彼は誰に対しても馬鹿丁寧に会話をする。年の割には(二十歳だったはずだ)物腰の柔らかい、しかし一方でビシッとっする会話の仕方で誰とも接していた。
今ではむしろ彼が私に対して、誰とも変わらないしゃべり方で会話してくれていることを感謝している。
本当は、そんな余裕ないはずなのだ。……彼は私を特別視するはずなのだから。
惚れ薬を被った後も、私に対しての接し方はそこまで変わっていない。
彼の精神力が高いのか。それとも、彼が愛を語るときはこんな感じなのか。それは私にはわからない。
だが、おかげでこの旅は思いのほか気を張っていなくても良いのだ。思えば、屋敷にいた時よりもリラックスしている。
だから、こんな風に心地よさなんかをのんきに話していられる。
ルナリア・カガミとギンセン・ロナの旅は、呑気に継続できているのだ。
「ですがお嬢様、実はこの草原の地下には、かつての人類が建造した地下道が存在するのですよ?」
「かつての人類の地下道?」
「ええ、ずっとこの先まで続いている地下道です」
かつての人類。それは今より数百年前まで存在したという古代文明だ。
滅亡してしまい、今でこそその時の技術はほとんどが失われたが、その影は今でも残っている。
たとえば、私たちが『宇宙』とか『地球は星』という概念を、誰が解明したかもわからず理解していたり。
たとえば、今の話のように、到底現在の技術で作れない建造物がひっそりと残されていたり。
「そこに、惚れ薬の技術に関する何かは無いの?」
「んー、難しいんじゃないですかね。ひとつ前の街で聞いた話でしたが、ただ地下にあるってだけの細長い空間ってだけのようです。しかもそんな地下深くないですし、一般人が簡単な光源を持って侵入できるような場所です。ああいう特殊な薬品に関しての情報があるとするのなら、もっと話題になりますよ」
ギンセンの指摘は的を得ている。それに彼の事だ、ちゃんと調べを付けて話してる。
はたから見ればギンセンが嘘をついている可能性も指摘するだろうが、だったらこんな話題を振る必要もないだろう。それに、彼も彼なりに真剣にこの旅の目的をこなそうとしている。
そのことについて前に一度聞いたことがある。その時の理由は「いつまでもお嬢様を連れまわすことも出来ないですよ」とのことだった。彼としても、「私が必要以上に罪の意識を感じている」と思っているようで、今の状況を永遠に続ける気はないようだ。……同時に「真剣に探したって、そんな早く見つかるわけない」とも考えているようではあるが……。
惚れた相手となら一生一緒に居たいのではないかとも思ったのだが、なんとなく普段のギンセンを見ているとなんとなく納得も出来る。
なすがままにされるように見えて、でもずっとそのままで居るつもりも無い。慌てる事はしないが、ただ突っ立っていることもしない。「そのうちどうにかなるさ」と考えているような男。
きっとそういう性格が、私との旅を無事にさせているのだろう。今ではそんな風に感じるのだ。
恋愛に急ぐような男だったら、私とのこの旅もまた違うものなったのだろう。
とはいえ、だからこそ私が率先して進まなくてはいけない。
彼を引っ張っていかなければならない。
「ほら、あまりのんびりしないで、進みやすい時に進んじゃいましょ?」
「ああ、待ってくださいお嬢様。あまりあわてると危ないですよ?」
慌てるそぶりを見せながら、ギンセンがこちらに向かって歩いてくる。
しかし私は、彼が進んだ分だけ、距離を保ちながら進む。
未だに、惚れ薬の効果がどの程度のものかわからない部分がある。
旅を始める際、一応二人の距離をある程度あけて歩こうと言う約束をしたのだ。
まあ、それも最近なあなあになってきており、時折人の多いところなどではもと近付いて歩いたりもしている。
「どうして? 別にここらはただの草原でしょう?」
「いや、それが先ほども言った通りこの当たりには地下道が作られていて、しかもなにぶん古いものなのでたまに崩れて穴になってるんですよ」
「たまにってどれくらい?」
「……いやまあ、今までもせいぜい2~3くらいしか見つかってないみたいですけど」
私はあたりを見回す。果てが無い……とは言わないが、易々と終わりにたどり着けるような広さの草原ではない。
「この広さの草原で、そんな数少ない穴に遭遇するのは、何かの猛獣に襲われるよりも可能性が低いんじゃない?」
ちなみに猛獣に関しては、ギンセンの抱える鞄に特殊な鈴をつけている。このあたりの野犬等の獣は、その音が苦手だという。
「まあ、確かに前を向いて歩いていれば、そうそうはまる人もいないと思いますが……」
「でしょ? そんな穴に引っかかるのは、相当に運が悪いか間抜けなのか、どちらかだわ」
などとギンセンと話すために後ろ向きで歩きながら進んでいた私の記憶は……。
次の瞬間跳んでいたのだ。

本編へつづく

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