フニクリ フニクラ サンプル - コミティア部活動|ヒロイン☆ふぇすた

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HEROINS 参加ヒロイン&対象作品紹介

(カレードスコープ「フニクリ フニクラ」より)

小山内麗
小山内麗
小山内麗

お試し読み

「レイちゃん的に、どの辺がいいの?」
「やっぱり、一生懸命努力してるところ!」
「え? 努力?」
「うん」
「ディオって、完璧な悪じゃないの?」
「ううん、全然完璧とはほど遠いって」
「強いし、切れ者のイメージがあるなぁ」
「それは、ディオ様が頑張った成果だって。ほら、時間停止だってエンヤ婆に言われて練習してたでしょ?」
「うん」
「ディオ様は、あんな感じで毎日練習して、打倒! ジョースター家を目指してるの。それこそ毎日、毎日」
「毎日練習? 変な絵が思い浮かんじゃった」
「どんなの?」
「目に力を入れて体液を遠く飛ばす練習。タルカスやストレイツォに的を持って貰ってて、そこに当てるぅ!
 バ、バリッ、バッ」
「高圧の体液を目から発射する! 名付けて、スペースリパー・スティンギーアイズ!」
 頭の中では、完全にアニメの子安さんの声が鳴り響くけど、ディオ様や吸血鬼たちの様に目から高圧力体液は出せないから、指でミュウをつつく。
「もう、レイちゃん」
「あはは、ディオ様最高・・・・・・」
 顔から火が出るって、今の私がまさにそれ。
 同時に、自分への嫌悪感に胸がつぶされそうだ。好きなこと話しているとすぐに周りが見えなくなる。ディオ様の話題で一気にテンションがマックスになったところで、ここがいつも雑談をしている理科室前のベンチ兼収納じゃなくて、終点の一個手前、高尾駅で急に混み始めた電車の中だと気がついた。無論、周りの大人達が私たちのことなんか気にするはずがないし、自意識過剰になっているのがわかっていても、変なものを見る目で見られているような気がする。
 ミュウは、そんな私に気がつく様子もなく、いつもの笑顔だ。
「レイちゃん。ディオの元ネタになった人の曲買ってみたの。聞いてみる?」
「元ネタ?」
「うん。古い洋楽」
 アウターのポケットの中からスマフォとイヤホンを出すと、「はい」とイヤホンの片方をわたしてくれた。私は周りの視線から逃げ出すように、そのイヤホンを耳にする。
 もちろん、ジョジョの登場人物やスタンドの名前とかが、洋楽から取られていることは知っている。だけど、ディオ様に元ネタがあるとは思わなかった。ディオはイタリア語で「神」を指すと言うのを誰かから・・・・・・多分ミュウから聞いて、荒木先生はやっぱりすごいと思っただけだ。
 曲は、最初、重々しいエレキギターの旋律とそれに合わせるドラムスで始まった。私が興味を持てない曲だって聞いて五秒でわかるけど、まだ顔をあげて車内を見渡すことができない私は、そのままおとなしく聞き続けた。歌は英語で、なんとなくわかるようなわからないような。リスニングが苦手な私でさえ単語が拾えそうな綺麗な発音を高らかに響かせ歌う。でも、サビらしいところを聞いても、あんまりいい曲には思えない。結局、意味がわからないままに終わった。
 それでも、発音はいいから、エンドオブザワールドという単語と最後のバイバイと言う言葉は拾うことができた。
「どうだった?」
「うーん、よくわからない」
 私は苦笑いを浮かべてたと思う。
「この曲のタイトルなんだと思う?」
「わからない」
「ジョジョ関係」
「石仮面?」
「レイちゃん一部から離れてよ。エンドオブワールド」
 何やってんだ私、とか思う。歌詞の中でもエンドオブザワールドって歌っていったのに。今私たちにエンドオブザワールドと言えば、それは、第三部のアニメOPだ。ディオ様のスタンドのワールドとも絡む。
「これが元ネタ?」
 まさか、それは違うでしょ。と言いたくなるのを我慢した。
「じゃないかな。アニメの方は、エンドオブザワールドの後に少し歌詞が入るけど。締めはオラオラでしょ」
「オラオラだね」
「こっちはバイバイ。偶然だとしてもすごいね。ディオのスタンドはワールドだし。ディオって歌手がエンドオブザワールドを歌うって」
「そう言われてみれば・・・・・・そっか、そうだよね。コレが元ネタかも。すごいミュウ。でも、何で最後がバイバイなの?」
「「代替品と呼ばれていたものが逝ってしまった」という歌詞があるから、偽物の世界が終わるって意味なのかも。なんか訳してもはっきりしないの」
「ミュウでも訳せないの?」
「この詞を書いた人、自分の中からあふれ出るイメージで単語を選んでる感じがする」
「中二病外人?」
「そうかな? そうかも。でね、おまけがあって、このディオって歌手。メタル界の北島三郎って呼ばれてるんだって」
「北島三郎?!」
 マイク片手に、着物を着て歌い上げるディオ様の絵が思い浮かんでしまった。背中には、冬の荒波と旭日旗のような太陽を背負ってる奴。
 あ、すごくいいかも。
 頬が思いっきりゆるむほどの妄想世界にいたため、ワンテンポ遅れた。車内の圧力が減っていた。
「レイちゃん着いたよ。さぁ立って」
 ミュウはすでに席を立っていた。周りの大人たちはほとんど電車を降りている。
「終点?」
 後ろの窓を見ると、赤い鳥居とトリックアート美術館と書かれた建物が見えた。
「さぁ、レイちゃん。はやくいこう」
 ミュウは、私にはできないような笑顔を向けた。

   ◆

 私は、小山内麗(うらら)だから、ミュウは私をレイちゃんと呼ぶ。
 ミュウは、能勢美羽(みわ)だから、私はミュウをミュウと呼ぶ。
 私もミュウも、五年生の新学期が始まる春休みに、駅前できたタワーマンションに引っ越しして来て、同じ階、同じクラスになったのがそのはじまり。
 ミュウは私の家が引っ越してきた様子を見ていたらしい。私がミュウを知ったのは、転校生紹介で体育館ステージに出されて、さらし者のような自己紹介をしてから、先生に言われるまま五年一組の列の後ろに着いたときだ。
 第一印象は少女漫画っぽいだった。とは言っても私は少女漫画を読んだことがない。引っ越す前、毎週のように泊まりに来ていた叔父が必ず置いていく少年週刊雑誌が私にとっての漫画であって、少女漫画を改めて読む余地は最初からなかった。
 ミュウに聞くと私の第一印象は、活発な男の子だったらしい。あのころは、転校前に住んでいた前橋が寒くて、スカートを嫌っていたし。ママは丈夫だからと言う理由で登山服を私に着せていて、私の方も服には興味がないことと、冬の暖かさと、夏のさわやかさから、そういった服を好んで着ていた。今と比べれば運動にもはるかに積極的で、毎週、日本のどこかの山を登らされていたから、体力もきっとあのころの方がずっとある。
 あれから三年もの時間が経った。今の私は、教室の隅の方でノートの端っこに絵を描いているのが習慣のような、美術部所属のどうみてもオタク女に仕上がっていた。
 少年週刊雑誌を置いていった叔父が、ジョジョの単行本を一部から順に全部置いていったのがそもそも悪い。それらをママの目を盗んで一日四冊のペースで読み進み、すべてを読み終わると、また一部から読み返す。それを一年も繰り返していれば、目は悪くなるし、道も踏み外すのも当然だ。
 しかも、もともと絵を描くのが好きだったのが、運の尽きというか、トドメ。なるべくして私はオタク女として完成した。
 美術部所属と聞くと、叔母さん叔父さん連中は、何か絵を見せてと言う。でも、そういう大人が期待しているのは風景画や静物画、よくても有名なゆるキャラであって、私が描く様な漫画絵ではない。私が描くのは、もちろんディオ様。時々、ジョナサンか拍手をするゆるタルカスとゆるストレイツォ。せめてもの救い(?)は、私が荒木先生の絵をそのまま模写するところから入って、今もがっつり模写してるから、大人に見せられなくもないこと。ジョジョを知らないおじさんたちは、劇画という古い漫画を例えに出して感心するし。ジョジョを知るおじさんたちは、きまって三部ネタをリクエストをしてくる。ポルナレフ、承太郎、花京院そんなところだ。もちろん、見せなくていいならスケッチブックなんか見せたくもない。
 そもそも、公立中学校の美術部がガチ美術をやっている方がまれだ。美術部部員の子たちは、後輩も先輩も、ただ一人のぞいて皆オタク。私のクラスには、その勘違いをガチでやっているガチ美術部員の唐金さんと、所属を聞かないとまず美術部だとは思われないミュウがいる。
 ミュウは日本一さわやかなオタク中学生だ。五年生からの付き合いの私が言うのも変だけど、なぜオタクやっているのかわからない。おっとりしているかと思えば、フットワークが軽いし、運動神経抜群で、顔も広い。同じバスケ部なのに犬猿の仲の和田さんと田中さんが、一線を越えて歯止めが気かなそうになったとき、正論をまっすぐ二人にぶつけてその雰囲気を解消してしまったり。派手系の都心まで遊びに行っている子たちや、ガチ運動系の子たちとも別け隔てなく会話の輪に加われるし、他のグループともLAINも交換してるらしい。
 しかも伝説を持っている。一年の時、ミュウのクラス担任が体育の先生だったこともあって、ミュウは体育祭の応援看板を描かされた。いやがる唐金さんを巻き込んで、紅組看板に(進撃の巨人の)超大型巨人を描かせて、ミュウは、私も色塗りを手伝ったけど、(泣き虫ペダルの)御堂筋翔が小学校の紅白帽でスプリントをかける絵を描いた。「今年の体育祭はお化け屋敷か」と先生は苦笑いしていたけど、全校に大好評で、間違いなく、あの時から美術部そのものの株が上がった。そういえば、ミュウが部活動対抗リレーで怒濤の三人抜きをやって陸上部の先輩にたかられたのは、体育祭の後からだっけ。
 そうした伝説を聞かされているから、今年部に入ってきた後輩たちに慕われているし。ファンクラブはまだないけど、これがラノベの世界だったら間違いなくファンクラブくらいとっくにできている。
 私はそのミュウの幼なじみと言うポジジョンだ。

本編へつづく

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