Girl’sJunction サンプル - コミティア部活動|ヒロイン☆ふぇすた

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HEROINS 参加ヒロイン&対象作品紹介

(すあま皇国「Girl's Junction」シリーズより)

アマガイ ミオ
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「そう言えば。転校生って、もう入寮したの?」
「へ?」
 あたしはお吸い物のお椀を途中で止めて、目の前に座ってるハルちゃんを見た。エビのお団子みたいなのを口に入れて「あ、美味しい」って言ってる。
「転校生? 寮に来るの?」
「中等部の二年生だと思うけど、転校してきたのは確かね」
「そうなの? 朋夏さんに何も言われてないけど」
「ふぅん。それなら、寮生ではないのね」
「あーあ、残念だな~」
 あたしはお吸い物を一口、飲んでみた。じんわりとした味が口に広がる。今までに食べたことのない味だけど、何かほっとするような味だった。
「今、一人部屋なのってユメだけなのよね」
「うん。もう慣れたけど、やっぱり一人だと、つまんないかな」
 清麗寮は二人一部屋で、あたしも今年の春までは先輩と一緒だったけど、卒業しちゃって、しかも今年は入寮者がいなかったから、今はあたし一人なんだ。元々、寮に入ってる人も少ないから仕方ないんだけどね。
 今、寮生は全部で七人。寮長の朋夏さんに、あたしと同じ学年の子が二人と、中等部の三年生が三人。部屋は余ってるから、あと二十人ぐらい入れるんだけど、あたしみたいに、引越し以外で遠くから受験する人ってほとんどいないから空き部屋が多いんだ。でも、みんなで仲良く談話室で遊んだり、寮で決められてる勉強時間は勉強部屋に集ったりして楽しくしてるけど、消灯後は本当に一人ぼっち。寂しくて、ちょっと泣いちゃったこともあったし、元気の無いあたしを励ますために、ハルちゃんが泊まりに来てくれたこともあったっけ。ふと、そんなことを思い出して、しんみりしてたら。
「ユメ……大丈夫?」
「え?」
「お父さんも、お母さんもいいよって言ってるから、どう? うちに来ない?」
「あ、ううん。大丈夫だよ。ありがとう、ハルちゃん」
「本当に?」
「うん! もう慣れてきたし、一人だと部屋が広く使えるし」
「そう……あ。また散らかってるんじゃないでしょうね」
「えっと……あ、これ美味しい」
 あたしはごまかすように、手前の料理を口に入れた。……あ! 美味しい。ふにゃふにゃした歯ごたえで、かむとじゅわーって出汁が出てくる。
「ねぇ、これなんだろう?」
「……煮物、じゃないわよね」
「あと、このタレって何だろう?」
「ごま……いや、お味噌?」
「……美弥子さん、どうして懐石料理を作ったんだろう?」
「美弥子さんが食べたかったからでしょ?」
「でも、食べたいからって、作れるものなのかなぁ」
「……たぶん、無理だと思う」
 朱色に塗られたお盆の上に、ご飯とお吸い物が入った漆器が二つ。お刺身がキレイに盛られたお皿と、野菜の煮物みたなものが入ってる小鉢が三つ。どれも美味しいんだけど、あたしもハルちゃんも懐石料理なんて食べたことないから、分からないものばっかり。
 ご飯の上に乗ってる、柔らかくて黒いものとか、お刺身の横にある黒いタラコみたいなものとか、お吸い物の中に入ってる丸くて柔らかいお団子とか……。
 料理を作った美弥子さんは、「食後に白玉持って行くわね」って、奥に引っ込んでそれっきり。それはいつものことなんだけど、今日は側にいて欲しかったかな。そうすれば料理の説明とか聞けたのに。
「でも、美弥子さんってスゴイよねぇ」
「スゴイっていうか……まぁ、料理が上手なのは確かね」
 美弥子さんは、背はあたしより少し高いぐらいで、ふわふわのくせっ毛がカワイイ人なんだ。たぬき屋は、そんな美弥子さんの趣味全開のお店で、和風の落ち着いた内装に、流れるBGMは美弥子さんが好きなピアニストのCD……とりあえず、懐石料理を食べる雰囲気じゃないよね。
 あたし達は首を傾げつつ、体験したことのない美味しさを味わいつつ、時々、思い出したようにしゃべってた。
「手芸部の人たちが体育祭に向けて……って言ってたんだけど、何か知ってる?」
「手芸部? あぁ、応援合戦の準備じゃない?」
「応援合戦?」
「体育祭の応援合戦よ。あれって高等部の一年生がやるのは知ってるでしょ。あの衣装って自分達で用意するのよ」
「ええッ! そうなの?」
「もちろん、衣装だけじゃなくて、振り付けとか、場合によっては歌とか……まぁ、大体はクラスのそれぞれの部活の子が、やってるみたいね」
「へぇ、そうだったんだ。そんなの初めて聞いたなぁ」
「いつの頃からなのか分からないけど、伝統みたいよ? 学級委員と体育委員を中心に、手芸部とかダンス部の人たちで話し合って、場合によっては軽音楽部とか吹奏楽部とか、合唱部の人たちも参加するみたいね」
「へぇ、そうなんだ。ハルちゃん、よく知ってるね」
「先輩達から、いろいろ聞いてるからよ。夏前から、そんな話題で持ちきりだったし……寮には一つ上の人っていないんだっけ?」
「うん。寮長の朋夏さんは二つ上だし、あとは卒業した先輩だけど、先輩が一年生の時は……」
「四年前だから、私たちが入学した頃ね。覚えてないの?」
「もしかしたら、何か聞いたかもしれないけど、覚えてないなぁ」
 あたしは、お吸い物を全部飲み干して、そっとお椀とお箸を置いた。同じ学年の和佳ちゃんが手芸部なんだけど、お盆明けには寮に戻ってきたみたいで、あたしが寮に戻ってきた日も、部活だ~って言ってた。手芸部って、そんなに忙しかったっけ? って思ってたんだよね。応援合戦の衣装を作ってたのか……ん?
「ね、ねぇ。衣装って、誰が作るの? 手芸部の人たち?」
「クラスによるとは思うけど、基本的にある程度はみんなで作るのよ。ほら、去年、みんなで着物を作って躍ったクラスがあったでしょ? あれは夏前から準備してたんだって」
「あ、覚えてる! すっごくキレイだったよね~」
「でも、大体は今から準備するから、そんなに手の込んだものにはならないと思うけどね」
「そうだといいんだけど。あたし、被服は全然ダメだから……」
 小さい時からお姉ちゃんのお手伝いをしてたから調理は得意なんだけど、もともと手先は器用な方じゃないから、図工や美術は苦手だし、被服はもっとムリ。ハルちゃんは取れたボタンをササッとつけたり、ほつれたスカートを縫ったりできるけど、あたしは毎回、家庭科の授業が被服の時は居残り組み。スカートもまともに作れないのに、衣装なんて作れるのかなぁ。
「もう、そんな顔しないでよ」
「だって……」
「クラスでがんばるんだから、みんなでがんばればいいの。それに、わたしも手伝ってあげるから、ね?」
「うん、ありがと」
 ハルちゃんって優しいなぁ。困ったことがあると、いつも助けてくれるし、悩んでる時には相談にも乗ってくれるし。ハルちゃんと友達になって、ホント良かった。
 でも。
「何か、いつも助けてもらってばっかりだね、あたし」
「そんなこと……無い、わ……よ?」
「えー! その間は何?」
「だって、夏休みの宿題を手伝ったばかりだし」
「そ、そうだけど」
「夏休み前は、期末テストの勉強も見てあげたし」
「うん……」
「あと、ほら」
 ハルちゃんが、そっと手を伸ばしてきた。指で、あたしの口の辺りをスッと撫でて。
「ほら、ついてたわよ」
「え。ご、ごめん」
「謝らなくてもいいわよ」
 ハルちゃんはおしぼりで指先を拭いながら微笑んだ。
「と、言うわけで、ユメは手がかかる子なのです」
「むぅ。ヒドイよぉ」
「いいの。その分、ユメからいろいろもらってるから」
「え? ウソ。何?」
 でも、ハルちゃんはふんわり笑ったまま、それには答えてくれなかった。
「気になるなぁ……ねぇ、教えてってばー」
「だーめ。ナイショよ」
「えぇー」
 ぷくーッって、ふくれてたら。
「……白玉お待たせ」
「わぁッ! い、いつの間に?」
 美弥子さんが、特製白玉とお茶が二つずつ載ったお盆を持って、テーブルの横に立ってた。慣れた手つきで、あたしたちが食べ終えた食器を片付けて、特製白玉とお茶を並べる。
「……甘え始めたぐらいからかな」
「え? あたしが?」
「ううん、違う」
「じゃあ、ハルちゃんですか? そんなワケ……あれ?」
 ハルちゃんの顔を見ると、気のせいか少し赤い気がした。
「……ごゆっくり」
 そう言って、美弥子さんはまた奥に行ってしまった。
「……えっと、食べよっか」
「そ、そうね」
 ハルちゃんは、小さくコホンと咳払いすると、そっとお茶を口にした。

本編へつづく

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